第一四二回

衆第二六号

   児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利及び利益を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定め、もって児童の心身の健やかな成長を期し、あわせて児童の権利の擁護に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。

2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、性器、肛門若しくは乳首に接触することをいう。以下同じ。)をすることをいう。

 一 児童

 二 児童に対する性交等の周旋をした者

 三 児童の保護者(親権を行う者、後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者

3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、絵、ビデオテープその他の物であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

 一 性交等に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの

 二 衣服の全部又は一部を脱いだ児童の姿態であって性的好奇心をそそるものを視覚により認識することができる方法により描写したもの

 三 専ら児童の性器又は肛門を視覚により認識することができる方法により描写したもの(専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く。)

 (児童買春)

第三条 児童買春をした者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 (児童買春周旋)

第四条 児童買春の周旋をした者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

2 児童買春の周旋をすることを業とした者は、五年以下の懲役及び五百万円以下の罰金に処する。

 (児童買春勧誘)

第五条 児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

2 前項の目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、五年以下の懲役及び五百万円以下の罰金に処する。

 (児童ポルノ頒布等)

第六条 児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、若しくは公然と陳列し、又はこれらの目的で製造し、所持し、運搬し、輸入し、若しくは輸出した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

2 児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与、又は公然陳列に係る広告をした者も、前項と同様とする。

 (児童買春等目的人身売買等)

第七条 児童を児童買春における性交等の相手方とさせ又は第二条第三項第一号若しくは第二号の児童の姿態若しくは児童の性器若しくは肛門を描写して児童ポルノを製造する目的で、当該児童を売買した者は、二年以上の有期懲役に処する。

2 前項の目的で、外国に居住する児童をその居住国外に移送した日本国民も、同項と同様とする。

3 前二項の罪の未遂は、罰する。

 (児童ポルノの所持の禁止)

第八条 何人も、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持してはならない。

 (児童の年齢の知情)

第九条 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第三条から第七条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

 (国民の国外犯)

第十条 第三条から第六条までの罪並びに第七条第一項及び第三項(第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

 (両罰規定)

第十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第四条から第六条までの罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。

 (捜査及び公判における配慮等)

第十二条 第三条から第七条までの罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。

2 国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、児童の人権、特性等に関する理解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努めるものとする。

 (記事等の掲載等の禁止)

第十三条 第三条から第七条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、住居、容ぼうその他当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような事項を、新聞紙その他の出版物に掲載し、若しくは放送し、又はみだりにその情報を他に提供してはならない。

 (児童の権利に関する教育及び啓発)

第十四条 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの頒布等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止し、児童が年齢等に応じ健やかに成長することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めなければならないものとする。

 (心身に有害な影響を受けた児童の保護)

第十五条 関係行政機関は、児童買春の相手方となり、又は児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。

2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。

 (心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)

第十六条 国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となり、又は児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究を推進し、これらの児童の保護を行う者の資質の向上を図るとともに、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化を図る等必要な体制の整備に努めるものとする。

 (国際協力の推進)

第十七条 国は、第三条から第七条までの罪に係る行為の防止及び捜査に関し、国際的な連携の確保及び調査研究の推進その他の国際協力の推進に努めるものとする。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第三条(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第三十一条の五及び第三十一条の六第二項第二号の改正規定に限る。)の規定は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律(平成十年法律第五十五号)又はこの法律の施行の日のうちいずれか遅い日から施行する。

 (条例との関係)

第二条 地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。

2 前項の規定により条例の規定がその効力を失う場合において、当該地方公共団体が条例で別段の定めをしないときは、その失効前にした違反行為の処罰については、その失効後も、なお従前の例による。

 (風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部改正)

第三条 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を次のように改正する。

  第四条第一項第二号中「第二章に規定する罪」の下に「、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十年法律第▼▼▼号)に規定する罪」を加える。

  第三十条第一項、第三十一条の五及び第三十一条の六第二項第二号中「若しくは売春防止法第二章に規定する罪」を「、売春防止法第二章に規定する罪若しくは児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律に規定する罪」に改める。

  第三十五条中「又は第百七十五条の罪」を「若しくは第百七十五条の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第六条の罪」に改める。

 (暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部改正)

第四条 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)の一部を次のように改正する。

  別表第三十一号の次に次の一号を加える。

  三十一の二 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十年法律第▼▼▼号)に規定する罪

 (検討)

第五条 この法律の施行後三年を目途として、この法律の実施状況等を勘案し、必要があると認められるときは、これについて検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。


資料出所:衆議院


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